妊娠したら、着物は着ないほうがいい？

お腹に新しい命が宿っている際に、和装が求められる外出の機会にあたった場合には、着物の着用をためらうのは当然のことと思います。
たとえば、着物は洋服と比較して重量があり、帯によるお腹周辺の締め付けも気になることでしょう。
とはいえ、結婚式や七五三などのイベントには、やはり和装が相応しいという心情は容易に理解できます。

しかしながら、和装が日常であった昔の方々をかんがみてみると、妊娠中でも着物を普段着としていたわけですから、決して不適切な服装と言い切ることはできません。
また、実際には日々変化していく体型にあわせ、臨機応変に着付けが可能というメリットが着物にはあります。

ただし、やはり妊娠中の着用に際しては注意点や工夫があります。
そこで、ここでは妊娠中でも快適な着物ライフを送るための情報を紹介していきます。

固くて重い帯、締めても大丈夫？

妊娠中の着付けで一番心配なのは、帯の締め付けが赤ちゃんにとって負担なのではという懸念かもしれません。
しかしながら、実際は固定した帯によってお腹が保護されるだけでなく、重ね着された着物で冷えが防げるといったメリットがあります。

ただし、帯が固くて苦しいと感じる場合には改善が必要です。
帯を軽くて柔らかい素材にしたり、着付け時に過剰に締め付けないといった対応が大切です。
特におすすめなのは細い幅の帯で、身体への負担が軽いのが特徴です。

絹の生地は避けたほうが無難

また、着用時期につわりを抱えている方には、急な嘔吐により着物を汚してしまうといった懸念があるかもしれません。
着物の素材は絹というイメージが一般的ですが、現在では化学繊維を使用したものも広く普及しています。
これらの多くは撥水加工、防汚処理といった機能があり、クリーニングも可能なため、体調に合わせた使い方ができます。
また、最近では色留袖や訪問着といった格式が高いとされる着物でも化学繊維のタイプが増えており、ますます利便性が高くなっています。

実際にレンタル店などにも、洗えるタイプの着物が充実しつつあります。
せっかくの外出機会ですから、こうした機能性を上手く活用して、つわりの心配なく着物を楽しみたいものです。

腰紐や伊達締めの位置を調整しよう

妊娠中でなくとも、着物の着用機会が稀な方にとっては、腰紐や伊達締めは苦しく感じてしまうものです。
これらはきちんと締めないと着崩れが心配と思いますが、少し緩めるだけでも身体への負担が軽くできます。
また、ストレッチ素材であればより負担を軽減できるので、これらを組合せた調整がおすすめです。

転ばないように注意を

着物には大きなお腹を目立たなくさせる利点もありますが、慣れていない方には足元に注意が必要です。
たとえば、靴と比較して草履は歩きにくく、着物によって歩幅も狭いといった、足元の勝手が普段と異なります。
特に、靴下よりも足袋は滑りやすいため、転倒には注意をしなければなりません。
当然ながら、転倒は妊娠中の生活で最も避けたいことの一つですから、足元には普段以上の気づかいが必要です。
連れ添いの方などに手を取ってもらうなど、周囲の人たちには積極的に助力をお願いしましょう。

着物で行きたい……でも無理は禁物です

着物での外出は心が躍りますが、一方で妊娠中は体調の変化が激しく、お手洗いに行く回数も増える傾向があります。
こうした事情や急な体調不良に備え、外出時には着慣れた服を持参することをおすすめします。
万一具合が悪くなった場合にも、着替えがあるという心の余裕は、妊娠中に大切な精神的なケアの一つと言えます。
女性としておしゃれをしたい気持ちも自然のことですが、赤ちゃんのことを優先した心身への気づかいも妊娠中には欠かせないでしょう。

まとめ

以上のように、妊娠中に着物を着用することには、全く問題がありません。
化学繊維のような洗えるタイプを選んだり、着付けの工夫などの適切な気づかいにより、臨月まで着物ライフを楽しむことは充分可能です。
また最近では、ネットを介して着物をレンタルできるサービスが増えてきました。
特に妊婦さんにとっては、外出不要という点がやさしいサービスといえます。
レンタルであれば、多様な柄から季節に適したものや、素材も体調にあわせて選択できるというメリットがあります。

妊娠中ということに委縮するのではなく、着物のレンタルサービスを活用して、和装をより身近なものとして楽しむのはいかがでしょうか。