四季を楽しむ着物文化、着分けの基本ルールを解説
2020.5.25
着物
四季がある日本では、お馴染みとなっている季節ごとに行う衣替え。中でも四季を楽しむ文化が色濃く残る着物の衣替えは、平安時代から続く日本特有の習慣と言われています。そんな特徴のある着物における、四季による着物文化や着付けルールを理解することで、一層着物を楽しむことができます。
しかし着分けのルールとは言っても、最近では暖冬や急な気温の変化に伴って例外の場合もあります。そのため四季を意識しつつも、柔軟に着分けのルールを参考にすると良いでしょう。
ここでは着物文化として知っておきたい、着分けの基本ルールについてご紹介いたします。また着分けのルールに合わせて四季におすすめの色や柄、帯や小物についてもお伝えいたします。四季の着物の着分けに迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
着分けのルールの前に知っておきたい着物の種類
着物は「袷」「単」「薄物」という3つの仕立ての種類から、季節ごとに着分けます。この3つを軸に色や柄、帯や小物も、最適な物を合わせていきます。
それでは着分けのルールをご説明する前に、まずは3つの仕立ての特徴を見ていきましょう。
袷(あわせ)とは
胴回り、裾、襟に裏地をつけた仕立ての着物のことです。裏地がついているので、厚みがありやや重量感のある生地です。一般的によく目にする着物は袷のものが多いでしょう。お正月や成人式のようなイベントで着用する着物は、袷がほとんどです。
単(ひとえ)とは
袷とは異なり、裏地がついていない仕立て着物のことです。そのため袷よりも手軽に着られる点が特徴。表生地は袷と同じなので、見た目に相違はありません。季節感でいうと、春物や秋物の洋服イメージです。
薄物(うすもの)とは
単と同様、裏地がついていない仕立ての着物です。しかし袷と単と表生地が異なります。糸の密度を粗くした生地を使用しているため、風通しが良い点が特徴。薄物の布地には「絽(ろ)「紗(しゃ)」「上布(じょうふ)」があります。
見分けるポイントは「裏地」と「透け感」
季節によって3パターンの着物がありました。それぞれの大きな違いは裏地の有無です。そのため一般的には、裏地の有無でそれぞれを見分けられます。
しかし単と薄物はどちらも裏地がありません。ですが単の表生地は、袷と同じ。そのため裏地に加え、全体の透け感で判別しましょう。実際に手に取って確認してみると、3つとも生地の厚みが異なり、違いがよくわかります。
四季ごとの着分けの基本ルールとは
3つの仕立ての特徴、違いをご紹介しました。一般的には季節や気温に応じて、これらを木分けますが、最近では四季に関係なく暑かったり、寒かったりと気温の変動が大きくなっています。そのため基本ルールは参考として、その時々に合わせ最適な着分けをすると良いでしょう。
ここからは四季ごとの着分けの基本ルールをご紹介します。
10月〜5月は袷の季節
袷は10月〜5月に着用する着物。春・秋・冬と1番着る機会が多い着物といえます。着物ならではの重量感があるので、1年を通して着用している方も珍しくありません。そのため色や柄も豊富にある点が特徴。しかし裏地で胴回り使用されている白い胴裏には保温効果があるため、暑い時期にはあまり適しません。
6月と9月は単の季節
単は季節の変わり目である6月と9月に着用する着物。表生地は袷と同じですが、裏地がないため風通しが良い点が特徴。少し暖かいなと感じたら単を着用すると良いでしょう。
しかし裏地がないことで透け感があり、着物の線も出にくいので、下に長襦袢を着用する方が多いです。
7月〜8月は薄物の季節
薄物は7月〜8月の真夏に着用する着物。単と異なり表生地から薄いので、より風通しがよく夏でも心地よく着用できます。薄物の中でも「絽」はフォーマルな場でも着用されることが多く、「紗」はセミフォーマル・カジュアル向き。
また上布は通気性の良い高級な麻織物のことで、カジュアル向きに着用されます。単以上に透け感があり、着物の形も出にくいです。そのため透け防止のために色や柄を工夫したり、形を整えるために中に長襦袢を着用すると良いでしょう。
色や柄も四季を意識しよう
季節によって着物の仕立ても変えることで、四季を楽しめます。しかし単に着物の仕立てを変えれば良いということではなく、それに加え色や柄も四季を意識することで、より四季を楽しめます。しかし袷が1年を通して着用されるように、季節ものでない花・吉祥柄など四季を問わない柄もあります。
四季で着物の色や柄を選ぶポイントは、季節を少し先取りすること。その点を踏まえて四季に合わせて最適な色や柄をご紹介します。
春に最適な色と柄
春に最適な色は、パステルカラーやピンク、薄い緑や藤色。そして桃の花・桜・牡丹の柄が最適でしょう。春のイメージが強い桜は、咲く少し前か咲いてすぐに着用するのが、おすすめの着用時期です。
夏に最適な色と柄
夏に最適な色は、涼しげなイメージが伝わる水色や青のような寒色・モノトーン。そして6月〜7月上旬が見頃となる紫陽花、夏の暑い日差しの中で開花する朝顔のような夏の花の柄。また夏終わりの夕暮れを連想させるトンボが描かれているものも季節を先取りできる柄としておすすめといえます。豪華すぎない、涼しい色や柄が良いでしょう。
秋に最適な色と柄
お彼岸が終わる9月下旬頃からは、秋を意識すると良いでしょう。秋はもみじやイチョウ、柿のイメージが大きいです。そのため紅葉を想起させる深紅や茶色、深い紫や橙色も最適といえます。また柄は、紅葉・萩・桔梗・山茶花・撫子がおすすめです。
冬に最適な色と柄
木々の華やかさが鎮まる冬こそ、華やかな着物が映えます。特に冬はクリスマスやお正月といったイベントが多く、着物を着用する機会も多いでしょう。特定のおすすめの色はないのですが、菊や松竹梅の柄に合う、少し明るめの華やかな色合いを選ぶと良いでしょう。色合いを抑えたい場合には、帯や小物を華やかにするのも1つの手です。
帯や小物も四季に合わせよう
着物文化はとても奥深いものです。四季に沿って色や柄を選ぶことで、それぞれの季節を楽しめます。仕立て、色柄ときたら、次は帯や小物も四季に合わせると、さらにワンランク上の楽しみ方を体現できます。
帯と帯揚げ
帯や帯揚げは、着物と同時に衣替えをします。なぜなら着物と同じく、季節に合わせて作られているからです。
まず帯は大きく分けて2つ、夏帯と冬帯です。夏以外に使用する帯は、全て冬帯と呼ばれています。夏帯は締め付けても涼しくない風通しの良い素材、対して冬帯は厚みがあり温かい素材です。夏帯と冬帯で分類されていますが、生地や織りは多様なので、着物に合わせて最適なものを選びましょう。
色は着物に合わせて選びますが、柄は季節柄を描いている場合が多いです。そのためまずは柄から選ぶと良いでしょう。そして帯揚げも帯と同様に、夏用とそれ以外用の2種類です。夏用の帯揚げは透け感があり、それ以外の帯揚げは透け感がありません。
小物
着物の小物には、帯締め・履物・足袋・下駄などがあります。これらの小物は基本的に1年を通して使用できます。ただ帯締めと足袋には夏用もあります。バリエーションが豊富なので、色々な種類の小物をそろえておくと着物を引き立ててくれます。
まとめ
ここでは四季を楽しむための、着物の着分けルールについてご紹介いたしました。着分けのルールに合わせて色柄や帯、小物まで意識することがポイントです。日本特有の四季折々の季節を着物で美しく演出できると、より一層着物を楽しめるでしょう。また着分けルールは絶対的なものではないため、その日の気温や場所に合わせて最適な着物を着用してみてください。
レンタルきもの岡本であれば、豊富な仕立て・色・柄の着物、また帯や小物もご用意しています。そのため四季を演出しつつ、その日に最適な着物が着用できます。ぜひ四季を楽しむ着物文化を体験してみてはいかがでしょうか。
こちらの記事を書いたのは 正装用着物専門店 レンタルきもの岡本
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