紬ってどんな着物?紬の種類や特徴を紹介
2022.2.9
着物
日常的に着用されることは少なくなったものの、成人式をはじめとするイベントや観光の際に、日本の伝統的な着物は今なお親しまれています。
着物はさまざまな生地によって作られていますが、数ある着物の生地の中でも紬(つむぎ)を使用した着物は人気があります。また、一括りに紬といっても、さまざまな種類があり、それぞれ特徴も異なります。
そこで、今回は着物生地の代表である紬に焦点を当てて、その種類や特徴についてご紹介していきます。
着物における紬とは?紬の特徴について
そもそも紬とは、紬糸で織られた絹織物のことを指します。
紬糸は屑繭(くずまゆ)もしくは真綿(まわた)をつむいで撚りをかけて作り上げた糸で、それを織り上げることで紬の布ができあがります。
紬は数ある着物の生地の中でも、特に知名度の高い代表的な織物生地として知られています。
また、紬には6種類の染色法と14種類の糸の配列が存在し、これらに伴い実に84種類にも分類されます。そのため、一括りに紬といってもそのバリエーションは多々存在し、そのような豊かさが、紬が人気を集める主要な要因となっています。
紬の着物における作り方の特徴
一般的に紬は絹織物ですが、木綿素材を使用された着物でも紬と表記されているケースがあるので、紬の着物をお探しの場合には素材まで確認するようにしましょう。
紬は先染めという、生地にした後で着色するのではなく、糸の状態で染め上げる方法で仕上げられた絹織物です。そのため、紬は柄や模様を表現するまでに、後染めの布地に比べ時間と手間がかかります。しかしその分、繊細で独特の風合いが楽しめるのが特徴です。
また、紬をはじめとする絹織物は、一般的には蚕の繭から採れる絹糸を経糸(たていと)と緯糸(よこいと)に用いて織られています。より具体的には家屋の中で飼われた蚕の糸による家蚕絹(かさんきぬ)、野生の蚕である柞蚕(さくさん)や天蚕(やままゆが)からとれる野蚕絹(やさんきぬ)と呼ばれる種類が存在し、前者の方がより高級なものとされています。
紬の着物における生地の特徴
絹織物の中でも紬は特有の上品な光沢をもち、サラリと軽快な手触りの高級織物として知られています。さらに軽くて柔らかく、着物にした際には着心地に優れている特徴があります。
しかし、そうした特徴がある反面、水に弱いため縮みやシミになりやすく、経年や日光での変色もしやすいため、扱いには十分に注意が必要なデリケートな生地でもあります。
以前は着物に使用される生地と言えば、紬をはじめとする絹織物が中心でしたが、現在ではポリエステルをはじめとした化繊素材もよく使用されています。
こうした化学繊維の生地は、天然繊維に比べて水や日光に強く、扱いも容易であるため、最近では化学繊維の着物や、化学繊維と絹を混ぜた着物も多く作られています。
そうした中でも、紬をはじめとする絹織物は、化学繊維では表現できない独特の光沢や風合いに根強い人気があり、今でも絹織物にこだわる方が多くいらっしゃいます。
紬の種類とは?代表的な紬の着物5選
先述のように、一括りに紬といっても84種類にも分類され、非常に豊かなバリエーションが存在します。日本ではその地域の気候や風土、文化によって、さまざまな紬が作られていますが、ここでは代表的な5種類の紬をピックアップしてご紹介していきます。
大島紬(鹿児島県奄美大島)
数ある紬生地の中でも代表的なのが、鹿児島県の奄美大島を発祥とする大島紬です。「本場大島紬」の名称で伝統工芸品にも指定され、世界三大織物の1つとしても名を挙げられているほどの美しい生地です。
紬生地は先述の通り上品な光沢が大きな特徴ですが、大島紬は単に艶やかなだけではなく落ち着きのある光沢であるため、年齢を重ねても馴染みやすいのが魅力です。また長い間愛用できる一生物の着物としても知られており、大島紬の使われた着物は「着物の女王」「親子3代で使える着物」などと呼ばれて重宝されています。
さらに大島紬の染色には「泥染め」と呼ばれる奄美大島伝統の染色技法が用いられており、上質な風合いはもちろんのこと、色落ちしにくい点が特徴です。
結城紬(茨城県結城)
茨城県結城市や栃木県鬼怒川流域で生産されているのが、結城紬の着物です。結城紬は大島紬に並んで代表的な紬で、奈良時代から続く歴史ある高級織物として知られています。
その細かい縞(しま)と絣(かすり)を特色とした美しい風合いから最高級品として認知され、国の重要無形文化財にもなっています。さらに1977年には国の伝統的工芸品に指定され、2010年には「本場結城紬」の名でユネスコ無形文化遺産にも登録されました。
紬は全般的に軽く柔らかい生地で着心地に優れていますが、結城紬はそれに加えて丈夫さも持ち合わせている点が特徴です。
小千谷紬(新潟県小千谷)
寒さが厳しく雪深い地域である新潟県小千谷(おぢや)で作られているのが、小千谷紬です。
以前まで小千谷では麻布である越後上布(えちごじょうふ)が織られていましたが、その後に小千谷縮(おぢやちぢみ)として発展しました。小千谷紬はそこで培われた伝統技術を踏まえて生まれた織物であり、伝統技術と新しい技法が融合した、新しい形の紬織物として知られています。1975年には伝統的工芸品に指定され、生産量も増加し全国に広がっていきました。
小千谷紬の特徴は、素朴で温かみのある風合いとなめらかな肌触り、そして控えめな光沢感です。小千谷紬は比較的落ち着きのあるトーンが基本とされ、好みを問わずに長い間使用することができます。1975年には伝統的工芸品に指定され、生産量も増加し全国に広がっていきました。
黄八丈紬(東京都八丈島)
黄八丈紬は、黄色・樺色(かばいろ)・黒色の3色を基調とした絹織物で、東京都八丈島を発祥としています。黄色・樺色・黒色を表現するために、黄色は八丈刈安(コブナ草)、樺色はマダミ(タブの木)の樹皮、黒色は椎の木の樹皮と沼浸けをそれぞれ使って染め上げられています。
古くは幕府に納める年貢の代わりに黄八丈紬が用いられた歴史もあり、長い歴史の中で高い人気を保ってきたとされています。
また江戸時代後期には、人形浄瑠璃「恋娘昔八丈」で黄八丈の衣装が採用され人気を集めたと伝えられています。その文化的価値から、経済産業省によって伝統的工芸品に、東京都産業労働局によって「本場黄八丈」の名称で「東京の伝統工芸品41品目」に指定されています。
久米島紬(沖縄県久米島)
最後にご紹介するのが、沖縄県久米島の久米島紬です。久米島は紬の発祥の地とも言われており、そこで織られる久米島紬は、先述の大島紬や結城紬の原型となったともいわれています。
久米島紬は、蚕から取った真綿でつむいだ糸を原料糸として織られている点は、一般的な絹織物と同様ですが、天然の草木や泥によって染色する点が大きく異なっています。
1人の織子(おりこ)による一貫した手作業で時間と手間をかけて丹念に織り上げられており、素朴でしなやかな風合いが最大の特徴です。
1975年には伝統工芸品として通産産業大臣の指定を受け、1957年には沖縄県の無形文化財として、2004年には国の重要文化財として指定されています。
まとめ
本記事では、紬の種類や特徴についてご紹介してきました。
結城紬や大島紬をはじめとして、紬には多種多様な種類があり、今なお根強いファンが多い生地です。
紬の着物には多くの魅力がありますが、着物は着付けや管理が難しく、購入するとなるとネックになる点が多いのも事実です。
しかし最近では着付けや管理の手間がないレンタル着物の普及によって、紬をはじめ、さまざまな生地の着物を、その都度レンタルして楽しむ方が増えています。
レンタルきもの岡本では、紬を使用した着物をはじめ、多数の着物をご用意しております。着物でお出かけを楽しみたい場合には、ぜひレンタルきもの岡本をご活用ください。
こちらの記事を書いたのは 正装用着物専門店 レンタルきもの岡本
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