おめでたい日におすすめの縁起の良い柄「吉祥文様」とは?
2022.3.4
着物
着物にはさまざまな文様・柄がありますが、それぞれに異なった願いや意味が込められており、自分自身で着物を着用したり贈り物にしたりする際には、それらを加味したうえで選ぶ必要があります。
その中でも吉祥文様(きっしょうもんよう)は特に有名であり、おめでたい日におすすめの縁起の良い柄とされています。とはいえ一括りに吉祥文様といっても、その数は数十種類にも及びます。そこで今回の記事では、代表的な吉祥文様の種類と、それぞれの文様における意味合いについてご紹介します。
吉祥文様とは?
吉祥文様とは、縁起が良いとされる動植物や物品などを描いた図柄のことで、多くの着物にあしらわれています。着物の柄というと日本特有のものと思われるかもしれませんが、吉祥文様は東アジアを中心に世界各地で使用されている模様です。
吉祥文様の着物が特に重宝されるのは、成人式や結婚式などのおめでたい行事での着用です。着物だけでなく、慶事の宴会などで用いる調度品にあしらわれていることも多く見られます。
日本の伝統の中で、着物をはじめ食器や浮世絵などさまざまな物に描かれてきた吉祥文様は、贈り物としても人気の柄です。ただし、吉祥文様のあしらわれた品を贈り物にする際には、贈る相手への失礼にならずに適切な願いを込めて贈れるよう、吉祥文様の種類について押さえておく必要があります。
吉祥文様の種類とは?代表的な吉祥文様8選
着物の文様・柄はさまざま存在しますが、中でも吉祥文様は多種多様です。ここでは、そのうち代表的な8種類の文様について、それぞれの意味合いも踏まえてご紹介します。
熨斗文(のしもん)
「熨斗文」は、熨斗鮑(のしあわび)をモチーフとして、細長く帯状の熨斗を数本束ねた吉祥文様です。文様だけでなく、祝儀の右上に付いている飾りのことを指す場合もあり、広く慶事における進物や贈答品に添える飾りとして用いられています。
日本では元来、お盆やお正月に神様に新鮮な海の幸・山の幸などを供える習慣があり、特に鮑(あわび)は食べると長寿をもたらすと考えられていました。このことから、熨斗鮑を模した熨斗文は縁起ものとして尊ばれるようになりました。
熨斗文は華やかかつ躍動的な印象を与え、熨斗が束ねられていることから人と人との繋がりや絆を表し、おめでたい席には打ってつけの柄です。
鶴文(つるもん)
「鶴文」は、その名の通り鶴を柄としてあしらった吉祥文様です。「鶴は千年、亀は万年」と言われるように、長寿の象徴としても有名な鶴は、日本人の心情に寄り添う鳥として広く知られています。鶴は日本だけでなく中国でも「千年も長生きする白い水鳥」として知られ、瑞鳥(めでたい鳥)と呼ばれて珍重されています。このように縁起の良い象徴である鶴があしらわれた鶴文は、数ある吉祥文様の中でも特に縁起の良い文様であり、着物だけでなく、さまざまな伝統工芸品や建築物にもあしらわれています。
鶴文には「夫婦が添い遂げる」「子孫繁栄」という願いが込められており、模様としてあしらわれる際には二羽以上で描かれることが一般的です。そのため鶴文は、結婚式で新婦が着る打掛(うちかけ)、親族女性が着用する留袖(とめそで)の柄としても頻繁に使われています。
亀甲文(きっこうもん)
鶴文と並んで代表的な吉祥文様が、亀の甲羅をかたどった六角形の模様である「亀甲文」です。単体で模様とされることは少なく、連結模様として使用されるのが一般的です。
上述の通り、鶴と同様に亀も長寿を象徴する生き物であるため、亀甲文も縁起の良い人気の柄です。ひとくちに亀甲文といっても、六角形の中に花が描かれている亀甲花菱(はなびし)をはじめ、六角形の中に更に六角形を描いた子持ち亀甲、3つの六角形を合わせることで三又に見える毘沙門(びしゃもん)亀甲など、さまざまなバリエーションが存在します。
桜文(さくらもん)
「桜文」は平安時代の頃から表されるようになった歴史ある文様であり、着物以外にも家具や食器などに幅広くあしらわれています。着物にあしらわれる場合には、その形状や色味から可愛らしさが感じられるため、特に若い女性に好まれています。
一括りに桜といっても枝垂桜をはじめ八重桜や山桜など、さまざまなバリエーションが存在します。実写的な文様でなければ季節を問わず着用が可能であり、大胆に図案化された桜の振袖は、実際春に限らず幅広いシーンで着用されています。
雪輪文(ゆきわもん)・雪花文(せっかもん)
「雪輪文・雪花文」は、その名の通り雪を由来とする吉祥文様で、雪の六角形の結晶を文様にしたものや、花に見立てて円くかたどったものなどがあります。
雪が多く降った年の農作物はよく育つとされ、雪は農地を豊かにするために欠かせない存在だとされています。このことから、雪輪文・雪花文は豊作の象徴としても知られています。
雪というと冬をイメージしがちですが、清涼感や爽やかな印象を与えるために夏に用いられることもあります。
「~年代別~夏の着物コーディネートのポイントを紹介」の記事はこちら
松文(まつもん)
「松文」は松の樹木をモチーフにした吉祥文様で、着物をはじめ食器や伝統工芸品にもあしらわれています。一括りに松といってもその種類は多種多様で、1本の樹木全体をモチーフとしたものだけでなく、松林や枝などのモチーフも存在します。
松は千年の樹齢をもって大木となることから、雄大さや神聖さ、それに加えて清浄さといった意味合いが込められるようになりました。
また、松は比較的過酷な環境でも枯れずに育つことから、不老長寿の願いを込めたものとしても人気があります。
矢絣文(やがすりもん)
「矢絣文(矢絣)」は矢羽根を表した吉祥文様で、ほかにも羽根絣・矢筈絣・矢飛白などと表記されます。
弓で射た矢は戻らないことから「出戻らない」という意味が込められており、昔から縁起の良い文様として重宝されてきました。そのため、江戸時代には嫁入りの支度の際に嫁入り道具や小道具に加えて、矢絣の着物を持たせたと言い伝えられています。
さらに矢絣文は、明治から大正頃にかけての女学生の定番衣裳の柄としても知られており、今日でも卒業式で矢絣の袴が多く用いられています。
七宝文(しっぽうもん)
「七宝文」は、円周を円孤によって4等分した図案を用いた吉祥文様で、「輪違いつなぎ」「曲輪(くるわ)つなぎ」とも呼ばれます。七宝とは、「金・銀・水晶・珊瑚・瑠璃(るり)・瑪瑙(めのう)・硨磲(しゃこ)」という仏教における貴重な7種類の宝物を意味しており、このことから縁起の良い柄として古くから珍重されてきました。
円形が連なっていることから、七宝文には人間関係を豊かにする願いが込められるようになり、夫婦円満や人々の調和といった意味合いを持つようになりました。留袖や袋帯など、幅広く用いられる人気の吉祥文です。
まとめ
今回の記事では、吉祥文様の代表的な8つの種類をご紹介しました。
ここでご紹介した以外にも数十種類の吉祥文様があり、それぞれに異なる願いや意味が込められています。着物選びの際にそれぞれの吉祥文様の種類を知っておくことで、より思い出に残る着物を選ぶことができます。また大切な方への贈り物として選ぶ場合も、それぞれの吉祥文様に込められた願いやメッセージを知っておくことで、より喜ばれる品物が選べるようになるでしょう。
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こちらの記事を書いたのは 正装用着物専門店 レンタルきもの岡本
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